India インド ヴァラナシにて 2 祠の横に座っていた男と目があった。瞳孔が開きっぱなしの黄ばんだ眼球。 男は立ち上がった。 妙に痩せているのは覚醒剤かヘロインか。 男がひょこひょこと歩いてきた。ここの住民の大半は不健康に見える。 男は小汚い顔を容赦なく近づけた。男の顔が近す... 2019.05.19 India遊行記
India インド ヴァラナシにて 1 南へ向かってきたガンジス河の流れが、ヴァラナシでは北へ向かっていく。 インドの人々は、単純に大地の高低からこのようなことが起こっているとは考えなかった。 ここにはただならぬ神の力が働いており、ここで死ぬ者は解脱するといわれている。 ヴァラナ... 2019.05.18 India遊行記
India インド サンチーにて 私はバスに揺られていた。 バスといっても、バンを少しだけ大きくしたような大きさの古いバスだ。 キズとほこりで曇った窓の外には、かわり映えしないインドの風景がぼんやりと続いている。 代わり映えしない交差点でバスが止まった。 小雨の中、降ろされ... 2019.05.17 India遊行記
India インド ブッダガヤーにて 2 普段、三千人しかいない村にダライラマ法王からカーラチャクラの灌頂を受けるために世界中から三万人が集まった。 この時のカーラチャクラの大灌頂は、もっとも歴史のある転生活仏であるカルマパと、ニンマ派の法王ペノール・リンポチェも共に受けられたので... 2019.05.16 India遊行記
India インド ブッダガヤーにて 1 暗闇の中、無機質な夜行列車に揺られて、ガヤー駅に到着した。 闇夜だった。 暗いうちに移動するのは危険だ。 夜明けまで待たなければならない。 待合のスペースは、多くのインド人と二頭の野良牛で埋め尽くされていた。 隙間を見つけ、バックパックを枕... 2019.05.15 India遊行記
India インド タージマハールにて 静寂の暗闇の中、月明かりを浴びて、淡く白光を放つ巨大な墓。 タージマハールは霧に包まれ、幻想的な情景を構成していた。 写真では何度も目にしていたが、実物は写真とは違う。 目の前の白い墓は、写真には写らない不気味な静寂に満ちていた。 王は死ん... 2019.05.14 India遊行記
India インド アグラーにて 夜明け前の駅前でリクシャーに乗った。 険しい顔の老人は何も言わずにペダルを踏み込んだ。 ぽつり、ぽつりと灯る街灯が、電柱の周りだけを黄色く照らしている。 わずかな灯りに小さな羽虫が群がっていた。 街灯から少し離れるとすぐに暗闇だ。 真っ黒な... 2019.05.13 India遊行記
Indonesia インドネシア ボルブドゥールにて 夜明け前、ボルブドゥールの石段を登った。 この遺跡は世界三大仏教遺跡の中で、唯一の密教遺跡だ。 回廊をまわり、少しずつ上に登って行く。 回廊には、釈迦如来の生涯と華厳経の入法界品に説かれている善財童子の物語が浮き彫りにされている。 善哉童子... 2019.05.12 Indonesia遊行記
Indonesia インドネシア バリにて 4 チベット文化圏に残る曼荼羅は円形が多いのに対し、日本密教の曼荼羅は方形が多く伝承されている。 それでも、円形、方形のいずれの曼荼羅も周囲は縁で覆われている。 それは多くの場合、曼荼羅は全宇宙を構造的に示しているからである。 ところがバリ島の... 2019.05.11 Indonesia遊行記
Indonesia インドネシア バリにて 3 バリの田は、今まで見たどこの田よりも美しかった。 なだらかな起伏に段々に設けられた田のところどころに椰子が生えている。 機械で植えられた日本の田のように均一な平面ではなく、表面に微妙なやわらかさがある。 同じ手植えでも、ネパールの田とも違う... 2019.05.10 Indonesia遊行記
Indonesia インドネシア バリにて 2 ウブドは芸術の村である。「ジャングルに行けば、いつでも果物があり、河に行けば、いつでも魚がいるから、食べ物のためにあくせく働く必要がなかった。村中みんなが、暇つぶしに絵を描いたりしていたんだよ」 雨宿りのために偶然、入り込んだ画廊の主人は話... 2019.05.09 Indonesia遊行記
Indonesia インドネシア バリにて 1 バリはテーマパークのように観光化された島だ。 めぼしい宗教施設や行事はほとんど観光化されていて、外国人観光客から外貨を得るためのショーになっている。 南国らしい巨大な葉の上に、焼き豚と米をのせた料理を出す地元の食堂で、向いに座っていたマデさ... 2019.05.08 Indonesia遊行記
Laos ラオス ルアンパバーンにて 2 真上に昇ったルアンパパンの太陽の日差しはオゾンホールのそれと同じくらい厳しかった。 宿の一階にはプラスチックのテーブルとイスが並び、食事できるようになっていた。 注文を取りに来た女の子が、申し訳なさそうに停電なので扇風機が使えないことを私に... 2019.05.07 Laos遊行記
Laos ラオス ルアンパバーンにて 1 西の空がまだ暗い時間に私は、外に出た。 オレンジ色の衣を着た僧侶のとてつもなく長い行列が、いつか見た夢のようでまるで現実味のない朝だった。 ここルアンパパンはラオスの小さな田舎町だが、町全体が世界遺産に登録されている珍しいところだ。 私は... 2019.05.06 Laos遊行記
Myanmar ミヤンマー チェントンにて ミヤンマー北部にチェントンという外国人に対しては非解放となっていた小さな町がある。 チェントン出身の友人から何度も「チェントンはいいところだから一緒に行こう」と誘われていたのだが、私はチェントンに行くことにずっと躊躇していた。実際に言った人... 2019.05.05 Myanmar遊行記
Myanmar ミヤンマー チャイティヨーパゴダにて 世界は、霧で覆われていた。 霧の中にうっすらと寺院が見える。 境内に入る前に、蓮の花と、線香と、ろうそくとを買った。 山の上は高台になっており、大理石で舗装されていた。 霧の中に、仏塔が見える。 崖にせりだした大岩の端にちょこんと乗っている... 2019.05.04 Myanmar遊行記
Myanmar ミヤンマー パガンにて 綿アメをうすーく引きのばしてみたような軽い雲が浮いている。 よーく見ていると、ゆっくりと形を変えながら、少しずつ西へ流れていくのがわかる。 水色の大空の下は見渡す限りの広大な平原だった。 赤茶けた大地のところどころには木や茂みが生えていたが... 2019.05.03 Myanmar遊行記
Myanmar ミヤンマー マンダレーへ 日が暮れた後、私はバスに乗り込んだ。 エアコンバスは日本の観光バスそのままだった。 ミヤンマーの車は、日本から輸入した中古車がほとんどだが、塗装し直さないので車体に観光会社の名前がそのまま日本語で書かれている。 私は一番前の補助席に、威圧的... 2019.05.02 Myanmar遊行記
Myanmar ミヤンマー バゴーにて 朝食の後、宿から一歩外に出ると、宿の前でたむろしていたサイカー乗りたちに囲まれた。 インドのリクシャーは客席が自転車の後ろに付いていたが、ミヤンマーのサイカーは客席が自転車の横に付いている。「サイドカー」なのだろうが、ミヤンマーでは「サイカ... 2019.05.01 Myanmar遊行記