インド カルカッタにて 2

India

 カルカッタの博物館は、死と退廃に満ちていた。

 大量の虫の標本は、劣悪な保存状態のため変色し、薄い羽が破れ落ちたりしている。標本と言うよりも、ガラスケースに虫の死骸を並べたといったほうがふさわしい。

 インドでは、日本よりも命が格段に軽く扱われているが、それでもこれだけ無駄な虐殺は珍しい。

 私は標本が陳列された部屋から出た。

 恐竜の化石がある。近くで見ると骨にはびっしりと落書きがほどこされていた。

 古くなった蛍光灯が、ちかちかと点滅している。

 すべてが汚らしく、埃をかぶっていた。

 知識が、人を豊かにすることなのではない。

 知識が、世界に調和をもたらすのではない。

 知識を通さず、まったくの無媒介に直接、世界を認識する。

 その時、世界は完全に調和し、あなたは本当の豊かさを知る。

 

こころを鍛えるインド (講談社ニューハードカバー)

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