「五悔」 普賢行願讃

常用経典

真言密教では「普賢行願讃」ではなく、金剛界は「五悔」、胎蔵界では「九方便」を読誦する。

伝統説では「普賢行願」と「五悔」と「九方便」は異名同体であり、同じ内容であるとされる。

五悔は、「至心帰命」「至心懺悔」「至心隋喜」「至心勧請」「至心廻向」の五段からなる。

「至心懺悔」だけでなく他の段も「悔」というのは、過去に行願を実践しなかった過失と、行願に背いた罪を懺悔する意味がある。

第一 至心帰命

十方一切の仏と最勝の妙法と菩提衆とを帰命したてまつる。

身口意清浄の業を以て、慇懃に合掌し恭敬して礼したてまつる。

大悲毘慮遮那仏に帰命し頂礼したてまつる。

 

第二 至心懺悔

無始より諸有の中に輪廻して、身口意の業より生ぜる所の罪を仏菩薩の懺悔したまふ所の如く、我れ今陳懺することも是の如し。

大悲毘慮遮那仏に帰命し頂礼したてまつる。

 

第三 至心隋喜

我れ今深く歓喜の心を発して、一切の福智聚を隋喜す。

諸仏と菩薩との行願の中の金剛の三業より生じたまふ所の福と、縁覚と声聞と及び有情との集むる所の善根とを尽く隋喜す。

大悲毘慮遮那仏に帰命し頂礼したてまつる。

私は今、深く歓喜を発して、すべての福徳と智慧を随喜する。

 

第四 至心勧請

一切の世燈の道場に坐して、覚眼開敷の三有を照したまふをば、我れ今蝴跪して先づ無上妙法輪を転じたまへと勧請したてまつる。

有らゆる如来三界の主の般無余涅槃に臨みたまふ者をば、我れ皆勧請して久しく住せしめたてまつる。

悲願を捨てずして世間を救ひたまへ。

大悲毘慮遮那仏に帰命し頂礼したてまつる。

 

第五 至心廻向

懺悔し随喜し勧請したてまつる福をもって、願くは我れ菩提心を失せず。

諸仏と菩薩との妙衆の中にあって、常に善友の為めに厭捨せられず。

八難を離れて無難に生じ、宿命住智あって身を荘厳し、愚迷を遠離して悲智を具し、悉く能く波羅蜜を満足し、富楽豊饒にして勝族に生じ、眷属広多にして恒に熾盛ならん。

四無擬弁と十自在と六通と諸禅とを悉く円満せん。

金剛幢と及び普賢との如く願讃し回向することも亦た是の如し。

大悲毘慮遮那仏に帰命し頂礼したてまつる。

以下、読誦用です

  第一 至心帰命
帰命十方一切仏(きべいしっぽういっせいふ) 最勝妙法菩提衆(さしびょうはほていしゅ)
以身口意清浄業(いしんこういせいせいぎょう) 慇懃合掌恭敬禮(いんぎんがっしょうきょうけいれい)
帰命頂礼大悲毘慮遮那仏(きべいていれいたいひひろしゃだふ)
 
第二 至心懺悔
無始輪廻諸有中(ぶしりんかいしょゆうちゅう) 身口意業所生罪(しんこういぎょうそせいさい)
如佛菩薩所懺悔(じょふほさそさんかい) 我今陳懺亦如是(がきんちんざんえきじょし)
帰命頂礼大悲毘慮遮那仏
 
第三 至心隋喜
我今深発歓喜心(がきんしんぱつかんぎしん) 隋喜一切福智聚(すいきいっせいふくちしゅう)
諸仏菩薩行願中(しょふほさかいげんちゅう) 金剛三業所生福(きんこうさんぎょうそせいふく)
縁覚声聞及有情(えんかくせいぶんきゅうゆうせい) 所集善根盡隋喜(そしゅうせんこんしんすいき)
帰命頂礼大悲毘慮遮那仏
 
第四 至心勧請
一切世燈坐道場(いっせいせいとうさとうちょう) 覚眼開敷照三有(かくがんかいふしょうさんゆう)
我今蝴跪先勧請(がきんこきせんけんせい) 転於無上妙法輪(てんよぶしょうびょうほうりん)
所有如来三界主(そゆうじょらいさんかいしゅ) 臨般無余涅槃者(りんぱつぶよでっぱんしゃ)
我皆勧請令久住(がかいけんせいれいきゅうちゅう) 不捨悲願救世間(ふしゃひげんきゅうせいかん)
帰命頂礼大悲毘慮遮那仏
 
第五 至心廻向
懺悔随喜勧請福(さんがいずいきげんせいふく) 願我不失菩提心(げんがふしほていしん)
諸仏菩薩妙衆中(しょふほさびょうしゅうちゅう) 常為善友不厭捨(しょういせんにゅうふえんしゃ)
離於八難生無難(りよはつなんせいぶなん) 宿命住智荘厳身(しゅくべいちゅうちそうげんしん)
遠離愚迷具悲智(えんりくべいくひち) 悉能満足波羅蜜(しつのうまんそくはらび)
富楽豊饒生勝族(ふらくほうじょうせいししょ) 眷属広多恒熾盛(けんしょくこうたこうしせい)
四無擬弁十自在(しぶかいへんしゅうしさい) 六通諸禅悉円満(りくとうしょせんしってんまん)
如金剛幢及普賢(じょきんこうとうきゅうほけん) 願讃回向亦如是(げんざんかいきょうえきじょし)
帰命頂礼大悲毘慮遮那仏

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