スリランカ ポロンナルワにて
ポロンナルワという小さな村で、トゥクトゥクの運転手に「サファリに行かないか」と誘われた。 スリランカのサファリは、日本のサファリパークとはちがい、本当に野生の動物たちが見られる。 行ってもよかったが、私には金銭的余裕がなかった。サファリに行くなら、安くあげても百ドル以上の出費である。 「四百ルピーでいいよ。野生の象や孔雀に会えなかったら金はいらない。嘘じゃないよ。本当、本当」 嘘かもしれなかったが、四百ルピー(六百円)なら騙されてやってもいい。 私はトゥクトゥクに乗り込んだ。 トゥクトゥクはタ ...
スリランカ スリーパーダへ
お茶の新芽が、こんもりとした丘を鮮やかな色で覆っていた。 なだらかな稜線をやさしく撫でるように、おもちゃのような汽車に揺られてゆく。 列車は窓もドアも開けっ放しだった。若者たちが戸から外にぶら下がり、はしゃいでいる。 向かい合った席の男の子は窓に箱乗りしていた。男の子の横に座るおばあちゃんは、孫が窓から落ちないようにシャツの端を握りしめている。 時折、私と目が合うと、おばあちゃんは「何だか困っちゃったな」という顔をしたが、本当はとてもうれしそうだった。 この列車に乗っている誰もが、みんなわくわ ...
スリランカ ダンブッラへ
私は、ダンブッラ行きのハイウェイバスに乗っていた。 ハイウェイバスとは名ばかりで、12人が乗り込んだ8人乗りのバンは公道ばかり走っていた。 スリランカにはハイウェイ(高速道路)が無いので、おかしいとは思っていたのだ。 ハイウェイバスは、公道を高速道路なみのスピードで暴走していた。 バスは国営だが運転マナーは他のどの車よりも悪い。 早朝の道路には、動物たちの死骸が数メートルごとに転がっていた。 ハイウェイバスは異常な速度で何の躊躇もなく生き物たちをはね飛ばしていく。 死骸から大袈裟なくらい腸 ...