私は、ダンブッラ行きのハイウェイバスに乗っていた。
ハイウェイバスとは名ばかりで、12人が乗り込んだ8人乗りのバンは公道ばかり走っていた。
スリランカにはハイウェイ(高速道路)が無いので、おかしいとは思っていたのだ。
ハイウェイバスは、公道を高速道路なみのスピードで暴走していた。
バスは国営だが運転マナーは他のどの車よりも悪い。
早朝の道路には、動物たちの死骸が数メートルごとに転がっていた。
ハイウェイバスは異常な速度で何の躊躇もなく生き物たちをはね飛ばしていく。
死骸から大袈裟なくらい腸が飛び散っていた。
小さなバスは何匹もの犬をはね飛ばしていく。
はね飛ばすたびに、その振動が伝わってきた。
振り向くと、内蔵を飛び散らかした赤い犬が、小さく見えたが、すぐに遠ざかり、視界の外へいってしまった。
慈悲深い観音菩薩が居られるという補陀落浄土は、南インドの南海上に位置する、と『華厳経』は説く。
一説には、補陀落山はスリランカにある山だという。
自利のために他者が犠牲になることをかえりみない習慣的思考が、人々を不幸にしている。
バスを降りて歩き始めると、小道の入り口に土豪が積まれ、機関銃を構えた兵士が待機していた。