チベット文化圏に残る曼荼羅は円形が多いのに対し、日本密教の曼荼羅は方形が多く伝承されている。
それでも、円形、方形のいずれの曼荼羅も周囲は縁で覆われている。
それは多くの場合、曼荼羅は全宇宙を構造的に示しているからである。
ところがバリ島の曼荼羅は、下絵が曼荼羅の外側へまで連続しており、キャンバスの外側の世界にまで続く無限の広がりを想像させる。
コノハムシの如くに木の葉に擬態したバリの神たちは、ジャングルに密生する植物たちの上で同心円状に行儀良く並んでいる。
一番外側の縁は一応ぼんやりと色分けされてはいるものの、ジャングルは限りなく、その外側へ続いているのだ。
この曼荼羅の中心は、場所的な中心ではない。
このマンダラの中心は異界へと通じるジャングルの特異点であり、マンダラの広がりはそのまま奥深いバリのジャングルの広がりとつながっているのだ。