大黒天も、仏教とともにインドからやって来られました。
大黒天はインドの言葉で「マハーカーラ(大いなる暗黒)」
「摩訶迦羅天(まかきゃらてん)」と音写します。
日本の大黒天は満面の笑顔で福々しいですが、
胎蔵界曼荼羅の大黒天のように
本来は非常に禍々しいといっても差し支えないほど恐ろしい神なのです。
私が修行していたネパールのチベット仏教僧院は、
登山口にあったのですが、月に1回はビザの更新などの雑用で、
カトマンズの町に行かなければなりませんでした。
埃っぽいカトマンズの町の中心には大黒天がおられます。
ネパールの首都カトマンズの守護神はマハーカーラ=大黒天です。
この神は非常に血を好まれるので、
ネパールの人々は週に何度か山羊の首をはねて血をこの尊像の足元にかけていました。
他にもヒンドゥー教には血を好まれる神々がおられるのですが、
毎年秋に行われるダサインというお祭りでは
おびただしい数の山羊やニワトリの首がはねられ
家の神、土地の神、車の神など、あらゆる神に血が捧げられるので、
村中が血まみれになってしまいます。
その祭りの間、チベット僧院では金剛薩埵を本尊とした浄化の法会を修して
ヒンドゥー教徒たちが犯した殺生による業を浄化しようとするのです。
このように本来恐ろしい神である大黒天が日本で、
なぜ、ここまで福々しくなったのかという謎があるわけですが、
大黒天に限らず、福の神はどの方も恐ろしい側面をお持ちです。
神道の「大国主命(おおくにぬしのみこと)」の
大国(おおくに)が「だいこく」と読めることのほか、
大国主命も大黒天も戦う神であり、
食物に関係が深いなどの共通点から同一の神であると見なされました。
それで大黒天は大国主命の姿になったわけです。