『諸神本懐集』6 三嶋大社・箱根神社・八幡宮・日吉大社・八坂神社・稲荷大社・白山比咩神社・熱田神宮

神道・神仏習合

初めての方は『諸神本懐集』1からどうぞ

『諸神本懐集』5のつづき

三嶋大社・箱根神社

二所三嶋(にしょみしま)の大明神といふは、大箱根は三所権現なり。

二所は、伊豆山と箱根。
三嶋は、伊豆国一宮・三嶋大社(静岡県三島市)。
大箱根は、箱根神社(神奈川県足柄下郡箱根町)。

法体は三世覚母の文殊師利、俗体は当来道師の弥勒慈尊、女体は施無畏者観音菩薩なり。

当来=未来。
弥勒は、釈尊入滅後56憶7千万年後に下生される未来仏です。

三嶋の大明神は十二願王医王善逝なり。

十二願=薬師如来の十二の誓願。
医王善逝=薬師如来。

 

八幡宮

八幡三所は、なかは八幡大菩薩、阿弥陀如来、ひだりはおほたらちめ、本地観音なり。
みぎはひめ大神、大勢至菩薩なり。

八幡大菩薩=応神天皇。
“おほたらちめ”=気長足姫(おきながたらしひめ)=神功皇后。
“ひめ大神”=比売神。

若宮四所といふは、本地十一面観音なり。
若姫は姓勢至菩薩なり。宇礼(うらい)は文殊、必礼(ひちらい)は普賢なり。
これみな応神天皇の御子なり。

若宮四所=若宮・若姫・宇礼・久礼の四所であり、八幡宮の摂社。

つぎに竹氏の大臣は、本地阿弥陀如来、これおなじき天皇の巨下(しんか)なり。

“竹氏の大臣”とは、武内宿禰(たけうちのすくね・たけしうちのすくね・たけのうちのすくね『日本書紀』)のこと。(『古事記』では建内宿禰)
武内宿禰は、250年の長寿をもって人皇第十二代・景行天皇から、第十三代・成務天皇、第十四代・仲哀天皇、第十五代・応神天皇、第十六代・仁徳天皇の5代天皇に仕えた忠臣。

へついどのは普賢菩薩、おなじき天皇の姨母(いも)なり。

“へついどの”=八幡宮の摂社

 

日吉大社

日吉は三如来の垂迹、四菩薩の応作なり。
いわゆる大宮は釈迦如来、地主権現は薬師如来、聖真子は阿弥陀如来、八王子は千手観音、客人は十一面観音、十禅師は地蔵菩薩、三ノ宮は普賢菩薩なり。

“日吉”=日吉大社(滋賀県大津市)
かつては境内108社・境外108社と言われていましたが、中でも主要な社を山王二十一社と称します。
山王二十一社は、山王七社(上七社)・中七社・下七社から成り、本文中の“大宮”・“地主権現”・“聖真子”・“八王子”・“客人”・“十禅師”・“三ノ宮”が山王七社(上七社)です。

“大宮”=大比叡とも称し、社名は西本宮。御祭神は、大津京遷都の翌年(668)に大津京鎮護のために大神神社(奈良県桜井市)から勧請された大己貴神(オオアナムチ)。本地仏=釈迦如来
“地主権現”=二宮(小比叡)とも称し、社名は東本宮。御祭神は大山咋神(オオヤマクイ)。本地仏=薬師如来
“聖真子”=社名は宇佐宮。御祭神は田心姫神(タゴリヒメ)。本地仏=阿弥陀如来
“八王子”=社名は牛尾神社。御祭神は大山咋神荒魂(オオヤマクイのかみのアラミタマ)。本地仏=千手観音
“客人”=社名は白山姫神社。御祭神は白山姫神(シラヤマヒメ)。本地仏=十一面観音
“十禅師”=社名は樹下神社。御祭神は鴨玉依姫神(カモタマヨリヒメ)。本地仏=地蔵菩薩
“三ノ宮”=社名は三宮神社。御祭神は鴨玉依姫神荒魂(カモタマヨリヒメのかみのアラミタマ)。本地仏=普賢菩薩

 

 

八坂神社・稲荷大社

このほか、祇園は浄瑠璃世界薬師如来の垂迹、稲荷は聖如意輪観自在尊の応現なり。

“祇園”は八坂神社(京都市東山区)
“稲荷”は伏見稲荷大社(京都市伏見区)

 

白山比咩神社・熱田神宮

白山(はくさん)は妙理権現、これ十一面観音の化現、熱田は八剣大菩薩、これ不動明王の応迹なり。

“白山”は白山比咩神社(石川県白山市)
“熱田”は熱田神宮(愛知県名古屋市熱田区)

第一の総論

これみなその本地をたづぬれば、極果の如来、深位の大士なり。
興隆仏法の本誓にもよほされ、利益衆生の悲願に住して、かりに神明のかたちを現じたまへり。
寂光のあきのつき、ひかりを秋津嶋(あきつしま)のなみにやどし、報身のはるのはな、にほひを豊葦原(とよあしはら)のかぜにほどこす。
内証はみな自性の法身、本地はことごとく報身の全体なり。
その本地、さまざまにことなれども、みな弥陀一仏の智慧におさまらずといふことなし。
かるがゆへに、弥陀に帰したてまつれば、もろもろの仏菩薩に帰したてまつることはりあり。
このことはりあるがゆへに、その垂迹たる神明には、別してつかふまつらねども、おのずからこれに帰する道理あるなり。

 

 

 

 

 

 

 

※【本文】は、日本思想大系〈19〉中世神道論によりましたが、読みやすさを考慮し、カタカナをひらがなに改めました。

『諸神本懐集』7につづく

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