『中臣祓訓解』3 天津罪(あまつつみ) 国津罪(くにつつみ)

中臣祓訓解

 

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『中臣祓訓解』2のつづき

天之益人等(あまのますとら)
〈謂はく、一日に千人死にしとき、一日に千五百人生(あれま)す。是れ伊弉那諾尊と伊弉那美尊との誓願なり。故に天の益人(ますと)と名づくるなり。天と号づくるは、大日宮、世界国土、一切の我等衆生を作るが故なり。皆是れ国土日月の中に住する者なり。故に天の益人と曰ふ。其の事理を辨ずれば、其の本源を明らむるに、一切衆生、続生入胎の初め、先づ虚空に住す。其の後漸々にして形五輪の躰と成る。次に五輪反じて人の躰と成る。尊形は常柱にして反せず。凡そ世界は本より本覚なり。本より無明なり。本も亦法界、本は是れ衆生、本(もと)仏なり。〉

雑々罪事(くさぐさのつみこと)
〈中臣祓を以て、諸の罪を解除すれば、則ち是れ真正の浄戒波羅蜜多を宣説せむが為に、此の浄戒波羅蜜多に於て、意界不可得なり。〉

天津罪(あまつつみ)
〈謂はく、素戔鳥尊、天上所犯の罪と為。本記に載すること具らかなり。〉

許許太久罪(ここだくのつみ)
〈言はく、数多の謂なり。俗人己己波久(ここばく)と云、是れ訛(なま)れるなり。凡言なり〉

法別(のりわけ)
〈罪障懴悔の文なり。無漏清浄の法益なり。諄辞(あやつりことば)なり〉

国津罪とは
〈君臣上下の現在所犯の罪なり。〉

生膚断(いきのはだたち)
〈人を傷(そこな)ふなり。炙治なり。故に穢気有り。〉

死膚断(しにはだたち)
〈人を殺すなり。又死人を焼く名なり。故に穢と為〉

白人(しらひと)
〈白癩なり。又白癡なり。〉

古久美(こくみ)
〈瘜肉なり。又云はく、癭瘇の類なり。又云はく、黒癩なり。〉

己母犯罪
〈婚合の罪なり。一に云はく、不孝の罪なり。〉
惣べて祖父母、々々(父母)、伯叔父母、姑、兄姉、外祖父母、夫婦、子等、三密万徳、阿字同躰、遍く五輪を照らすなり。

己子犯罪(おのれがこをおかすつみ)
〈婚合の罪なり。母の胎内の時なり。〉
謂はく、陰陽遍満の躰乾坤に顕れて、皆是れ無始の一念なり、無明と貪欲とは、煩悩の躰なり。故に貪欲を懺悔すれば、即ち仏智に向ふ。

母与子犯罪(ははとことおかせるつみ)・子与母犯罪(ことははとおかせるつみ)
〈過去の父母は、則ち現在の夫妻、現在の妻子は、過去の父母等なり。〉
巳上贖(けが)す所の罪は、謂はく、煩悩に依りて、生死を受け易(かは)る因縁、或いは父母妻奴子と為(な)り、或いは兄弟姉妹と為り、若しくは天魔外道と為り、若しくは餓鬼禽獣と為る。始より今に至るまで、更(かはるがはる)生れ、代(かはるがはる)死す。煩悩塵労の門を排(おしひら)き、六道四生の囚(ひとや)に宿る。転変定り無し。善行を円満して、四恩を祓済し、懺悔の法を修して、一心の理に帰しぬれば、仏と異なること無し。故に則ち、我が心と、衆生の心と、仏の心と、三つの差別無し。我が意(こころ)即ち清浄なれば、我が意即ち宝乗なり。

畜犯罪(けだものをおかすつみ)
〈天皇の朝に、解除(はらひ)婚馬・婚牛鶏の類是れなり。又天孤等の怪なり。〉

昆虫(はうむしのわざはひ)
〈虫の怪は則ち大己貴神(おおなむちのみこと)、禁厭(まじないや)むる法(のり)を定むるなり。〉

高津神災(かんずかみのわざわい)
〈霹靂神の祟り(たたり)なり。乃ち雷電神の怪なり。〉

高津鳥災(たかつとりのわざはひ)
〈鳥類の怪なり〉畜仆〈牛馬等の類なり。〉

蠱物(まじもの)
〈厭魅咒咀なり。〉

天津宮事(あまつみやこと)
〈諸法は影像(やうざう)の如し。清浄にして瑕穢無し。取説不可得なり。皆因業より生ず。〉
神の宣命なり。祝詞なり。謂はく、之を宣(の)れば即ち一心清浄にして、常住円明の義益(ま)すなり。是れ浄戒波羅密多を修するなり。之を観ずれば不可得の妙理なり。

天津金木(あまつかなき)
〈現在に云はく、人犯科有れば、楡楉の二枝をもて祓ふ。是れ一に名づけて白枝と号(い)ふなり。是れ則ち如来大智の宝威、悪魔降伏の金輪なり。〉

千座置座(ちくらのおきくら)
〈木を以て之を為(つく)る。長き者は二尺四寸、八枝を以て束と為(し)、八座に八束を置く。短き者は長さ一尺二寸なり。四枝を以て束と為、四座に四束を置く。八万四千の諸膳供、八葉千葉の花臺、三世諸仏の宝座、天神地祇の宝器、天下太平の吉瑞なり。〉

天津菅麻(あまつすがそ)
〈遍照牟尼の一字金輪の表徳なり。摧魔怨敵(さいまをんじゃく)の三昧耶形の躰相なり。〉
神の代の昔、陽神(ひのはのかみ)の子素戔鳥尊(みこそさのをのみこと)、天上に登りて、多く犯過の罪有り。時に群神(ぐんじん)之を科(はか)り、千座置戸(ちくらおきと)の解除(はらへ)を以てす。天児屋命(あまつこやねのみこと)〈河内の国平岡なり。本地は地蔵なり〉をして以て其の解除の太諄辞(ふとのこと)を掌(つかさど)り、以て天下四国の中の敬祭を束(つか)ねしむ。崇重すれば、門には悪鬼更に向はず。誠深く舎に在れば、物怪永く及ばず。身躰を懺すること有らば、非時の魔、害せず。此の間にして、天神愚身を哀(あはれ)みて守護したまふ。

『中臣祓訓解』4につづく

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