『中臣祓訓解』4 瀬織津比咩神(せをりつひめ) 速須戔鳥尊=焔羅王

中臣祓訓解

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『中臣祓訓解』3のつづき

天津神天磬門押披(あまつかみはあまのいはとをおしひらき)
〈天照大神《照皇太子》、高皇産霊神《高貴尊》、天御中主神《照皇天子》、御気津神。豊受太神と号ふは是れなり。亦日なり。〉

国津神高山之末(くにつかみはたかやまのすへ)
〈須弥山〉。短山之末(みじかやまのすへ)〈七金山〉。

伊恵理(いほり)
〈宮殿なり。謂はく、国津神、大神、大倭、葛木、鴨、出雲大己貴、事代主神の類なり。伊恵理、是れは謂はく、廬戸宮なり。〉

所聞食(きこしめすところ)
〈請へること有れば必ず致す。祈ること有れば必ず応ず。故に大日四種だ法身の諸尊、光明心殿を排開き、妙観察智の月、内外十方の性を照す。仏神の命を頂き、霊鬼を助け、加護を蒙らむこと明けし、一如実相常住円照なり。然れば則ち天照大神は、大日遍照尊、諸神の最貴の者なり。尊きこと二つ無し。諸皆眷属に仕る者なり。〉
直に天津神は四洲を廻りて下界を照し、国津神は八州を径て国土を守る。此れ大慈大悲の誓願なり。此れ衆生利益の方便なり。
伊勢大神託して曰はく〈天平年中、行基菩薩、聖武天皇の勅使と為(し)て、造東大寺の事、祈誠し申し給ふ。此の時の御告文なり〉、実相真如の日輪、生死長夜の闇を明かにし、本有常住の月輪、無明煩悩の雲を掃ふ〈日輪は則ち天照皇大神、月輪は則ち豊受皇大神〉。両部不二なり〈胎蔵界大日教令輪身不動、金剛界大日教令輪降三世なり〉。

科戸風(しなとのかぜ)〈謂はく、八風神を驚かして、無明の雲を扇(あふ)ぎ、煩悩の闇晴れて、常住の月明かなり。故に三明七覚悟を開き、将に二世の素懐を遂げむとす。即ち諸仏の方便、此れ神明の具徳なり。〉

大津辺居大船(おおつべにをるおおふねの)
〈生死の大海なり。大乗懺悔の船なり。謂はく、纜(ともづな)の漂河(へうか)の東に解きて、精進の橦(はたほこ)を樹(た)て静慮の帆を挙げて、須臾(しゅゆ)に三祇を経て菩提の岸に到り登る。〉

繁木本焼鎌敏鎌以打掃(しげきがもとをやきがまのとがまもてうちはらふ)
〈謂はく、知恵の刀を磑(と)ひで百八の煩悩の藪を掃ふ。〉
右に謂はゆる、都(す)べて四重五逆の業塵、八風払ひて残ること無く、三業六情の罪垢(ざいく)、海水洗ひて留らず。八百万の鬼類等の怖れ、障碍(しゃうげ)の難無く、十魔四魔の大軍、速に万病の気を摧く。宜しきかな、無上の妙理を伝へて、一切種智を得、内外の障難を除きて、二世の悉地を成す。

速川瀬(はやかわのせにます)
〈謂はく、筑紫日向の小戸橋之檍原(をとはしのあはきのはら)の上瀬なり。内の意を安ずるに謂はく、三途八難の河なり。〉

瀬織津比咩(せをりつひめといふかみ)
〈伊弉那尊の所化の神なり。八十枉津日神(やそまがつひのかみ)と名づくるは是れなり。天照大神の荒魂(あらみさき)を荒祭の宮と号づく。悪事を除く神なり。随荒天子は焔魔法王の所化なり。〉

八百道(やほあひに)
〈謂はく、海原潮之八百重(うなばらしほのやほへ)是れなり。龍宮なり。〉

速開都比咩神(はやあきつひめといふかみ)〈伊弉那諾尊の所生の神なり。水門神(みずとのかみ)なり《二柱座す》。一に速秋津日子神(はやあきつひこのみこと)と名づく。天照大神の別宮、滝原(たきはら)と号づく。龍宮天子の所化なり。難陀龍王の妹速秋津比売神(はやあきつひめのかみ)、天照大神の別宮並宮と号す。五道大神の所化なり。一切の悪事を消滅するなり。〉

気吹戸(いぶきどに)
〈橘小戸河なり。一書に云はく、泰山と云々。〉

気吹戸主神(いふきどぬしといふかみ)
〈伊弉那諾尊の所化の神なり。神直日神と名づくるなり。豊受宮は荒魂を多賀宮と号づく。善悪不二の心智を以て、諸事に広大の慈悲を垂れ給ひ、聞くことを直し、見直し給ふ神なり。高山天子は大山府君の所化なり。〉

根国底国(ねのくにそこのくに)
〈無間の大火の底なり。〉

速佐須良比咩神(はやさすらひめといふかみ)
〈伊弉那美尊、其の子速須戔鳥尊なり。焔羅王なり。司命司禄等は此の神の所化なり。一切の不祥の事を散失するなり。〉
巳上、天益人より、速佐酒良比咩神に至るまで、天津祝詞、天上〈アマツカミ〉の梵語の言なり。

『中臣祓訓解』5につづく

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