カトマンドゥは喧噪と汚濁に満ち、いくつもの深刻な問題を抱えていた。
大気汚染もその一つだ。
カトマンドゥを走る車のほとんどが、インドから仕入れた中古車である。
インド国内を走る車もひどいが、さらにその中古である。そのうえネパールで売られているガソリンは不純物が多く、インドよりも格段に質が劣る。
そのため車の管がすぐに腐ってしまうので、ガソリンを垂れ流しながら走っている車も多い。
日本では、間違いなく廃車扱いになるような車がほとんどだ。
街に出るとき、私はいつもマスクをしていた。マスクをしないで街を歩いた日の晩は、大抵、鼻炎と頭痛に襲われる。
登山口への坂道が始まる場所から、バスの屋上に登った。
道が舗装される前は、しっかり掴まってないと振り落とされそうだった。村人でぎゅうぎゅう詰めになったバスは、右へ左へと大きく揺れ、いつ横転してもおかしくなかった。
実際、横転したこともあったらしいが、舗装された今は、優雅なものだ。
道いっぱいに、籾殻のついた米粒が敷き詰めてあるのが見えた。
バスは容赦なく、米を踏みつぶしていく。車に踏ませて、脱穀するのだ。だから安い米は砕けており、砂利がたくさん混ざっている。
チャイ屋の前で、バスの屋根から飛び降りた。
寺院に続く坂道を下って行く。
斜面に、段々に設けられた田は、揺れる淡黄色の稲穂で埋め尽くされていた。
遠くの方から、かすかに歌声が聞こえてくる。
赤や、青の鮮やかなドレスを着た女性たちが、歌いながら稲穂を担いでいた。
収穫の季節だった。