月別アーカイブ:2019年06月
『先代旧事本紀』概要
『先代旧事本紀』は「せんだいくじほんぎ」、または「さきのよのふることのもとつふみ」と読み、「旧事本紀(くじほんぎ)」や「旧事紀(くじき)」とも呼ばれます。 全十巻から成り、天地開闢から推古天皇までの史書です。 『先代旧事本紀』の「序」によれば、本書は聖徳太子(574-622)と蘇我馬子(?-626)が編述したと伝えられます。 平安時代より長らく、『日本書紀』『古事記』と並ぶ三大史書とされてきました。 ところが、延宝七年(1679)に、『先代旧事本紀大成経(以下、『大成経』)』が発見されました。 この『大成 ...
『先代旧事本紀』と『古事記』の序文偽書説とその価値
『先代旧事本紀』 『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ or さきのよのふることのもとつふみ)』は、 中世までは、『日本書紀』についで『古事記』よりも重要視されてました。 現在は、偽書とされていますが、偽書とされる理由の一つが序文にあります。 『先代旧事本紀』の序文と偽書説 先代旧事本紀ノ序 大臣蘇我馬子宿祢等が勅を承りて修撰まつる。 夫、先代旧事本紀は聖徳太子の且て撰所なり。 上は『先代旧事本紀』の序文です。 蘇我馬子が記した序文に、聖徳太子と蘇我馬子が中心となり著述・編集されたとあります。 そのため、中 ...
古史古伝と偽書
『Wikipedia』によれば、 古史古伝(こしこでん)とは、日本の古代史で主要資料とされている「記紀(『古事記』と『日本書紀』)」などの史料とは著しく異なる内容歴史を伝える文献を一括して指す名称。種類が多い。また超古代文献・超古代文書ともいう。なお、古史古伝は今のところ、いずれも学界の主流からは偽書とみなされている。 とされています。 しかし、古史古伝の中には『先代旧事本紀』のように、記紀が伝えていない物部氏の伝承、神名、神武天皇の長男の神八井耳命の後裔のことなども伝え、物部氏の偽書とされながらも研究資 ...
明恵上人がすごい! 明恵上人の生涯1 誕生~文覚上人~人柄
明恵(みょうえ)上人(1173-1232)は、 華厳宗中興の祖。法諱は高弁(こうべん)。 栂尾(とがのお)上人。 誕生 明恵上人の父は平家の武士でした。 良い子が欲しいと 京都嵐山の法輪寺に祈願されました。 すると夢に一人の童子があらわれ、 「汝が請う所の子を与へん」と告げて 針で右耳を刺されました。 明恵上人の母は 六角堂の如意輪観音に参詣し、 『観音経』を読経しながら お堂の周囲を一万遍めぐりました。 祈願した後、お堂の前ですわったまま 眠ってしまい夢を見ました。 母は、 夢の中である人から金柑を一つ ...
『阿字観』栂尾上人記 読み下し文 明恵上人の阿字観
栂尾上人=明恵上人 阿字観 栂尾上人記 夫れ菩提心と者即ち阿字観也。阿字観と者本不生の理也。本不生の理と者即ち諸佛の心地也。諸仏の心地と者一切衆生之色心の實相也。色心の實相と者我が一念の心也。一念の心と者不随は悪に善に着せざるの心也。方寸の胸中に八分の肉團有り。悟の前には八葉の心蓮臺と顕る也。此の心蓮臺の上に阿字有り。變じて月輪と成る。月輪と者我か心に起る菩提心の質(すがた)也。我か心に此理を具するのみにあらず一切衆生も同く具へせり。乃至非情草木も皆悉く備へたり。青き草の葉の上に置く白き露の色も阿字の質也 ...
ヒンドゥー教の三大神を生み出した観音菩薩
「『観音経』の三十三身とアヴァターラ」 で記したように、ヒンドゥー教では、 この宇宙は ブラフマー(梵天)により創造され、 ビシュヌ(那羅延天)が維持し、 ビシュヌが維持しきれなくなった時 シヴァが破壊し尽くし、 再生すると説かれます。 これを時間に置き換えると、 ブラフマーは過去、 ビシュヌは現在、 シヴァは未来ということになります。 現代のインドでの信仰としては、 梵天は過去の神として敬われてはいるけど、 熱烈な信者はごく少数だそうです。 また、カーストの高い富裕層は この秩序を維持し続けてほしいと ...
『観音経』の三十三身とアヴァターラ ヒンドゥー教の三大神 シヴァ ビシュヌ ブラフマー
ヒンドゥー教における最高神とは、 ブラフマー(梵天)、 ビシュヌ(那羅延天) シヴァ(大自在天)の三神です。 左からブラフマー・ビシュヌ・シヴァ これらの三神は トリムルティー(三神一体)であり、 本質的に同一であり、 いずれの神も ヒンドゥー教の最高神です。 本質的に同一ということは 三神は同じものの異なる働き、 それは同じものの 異なる顔という解釈もできます。 ですから、 一つの体に シヴァ、ビシュヌ、ブラフマーの 三面がついた ダッタトレーヤという三位一体を 端的にしめす ...
創造神だと誤解された梵天
この大宇宙は 何らかの 人格を持った存在によって 意図的に作られた ものではありません。 宇宙それ自身の潜勢力によって 形成された のです。 その潜勢力のことを 仏教用語で 業=カルマといいます。 ではなぜ ヒンドゥー教では、 梵天が 世界を創った ことになっている のでしょうか? 正量部の伝承によれば、 大梵天は 世界で一番 最初に生まれました。 それ故、 後から生まれた者たちに 創造神として 誤解されたのです。 大梵天は誤解されたまま、 梵天界に 大梵天王として 君臨しまし ...
瞑想によって体験される梵天の境地
ヒンドゥー教では、 梵天が世界を創造したとされてます。 また、世界を作り上げた梵天は この宇宙の根本原質であるといいます。 その根本原質を 「ブラフマン(梵)」といい、 また、 個々の本質を「アートマン(我)」 といいます。 アートマンは本来、 ブラフマンと同一のもの(梵我一如)なので 瞑想修行によって 梵と我を合一させること(神人合一) を実現すると 解脱できると説かれます。 しかし、 この境地は欲界からの解脱ではあっても 輪廻世界からの解脱ではありません。 瞑想のレベルでい ...
神神習合=神仏習合の成立基盤 日本人の和のこころ
『神と仏の出逢う国 』(角川選書)の中で 著者の鎌田東二氏は 「神仏習合」が成立してくる基盤として 「神神習合」があった この神々自体が習合するという 文化基盤の上に 「神仏習合」という、日本列島における 神々と仏菩薩の出会いと相互関係性が 作り上げられていったと考え られてます。 オオクニヌシに別名が多いのはそのためでしょう。 以下はオオクニヌシの別名です。 大国主神(おおくにぬし の かみ) 大穴牟遅神(おおあなむぢ-) 大己貴命(おおなむち-) 大穴持命(おおあなもち) 大汝命(おおなむち-) 大名 ...
真言密教の血脈と三身説 法身普賢 金剛薩埵
この記事は、 真言密教の血脈のうち、 大日如来から龍猛菩薩までの 相承を三身説で説明することと、 チベット仏教ニンマ派の ゾクチェンの血脈にも 少しだけ触れてます。 真言密教は 真言教主・大日如来から始まり、 第二祖・金剛薩埵、 第三祖・龍猛菩薩へと伝えられました。 如来の三種類の存在形態を 「三身」といいます。 三身とは「法身」「報身」「応身」です。 法身とは、 色も形も無い一切の本性です。 報身は、 日本では解釈が数種あり、 統一されていませんが、 チベットにおいては 「報身は色身の根源 ...
大黒天と血を好む神と金剛薩埵による浄化
大黒天も、仏教とともにインドからやって来られました。 大黒天はインドの言葉で「マハーカーラ(大いなる暗黒)」 「摩訶迦羅天(まかきゃらてん)」と音写します。 日本の大黒天は満面の笑顔で福々しいですが、 胎蔵界曼荼羅の大黒天のように 本来は非常に禍々しいといっても差し支えないほど恐ろしい神なのです。 胎蔵界曼荼羅の大黒天 私が修行していたネパールのチベット仏教僧院は、 登山口にあったのですが、月に1回はビザの更新などの雑用で、 カトマンズの町に行かなければなりませんでした。 埃っぽいカトマンズ ...
『即身成仏義』 『観智軌』を『金剛頂経』といえるのか?
弘法大師・空海の『即身成仏義』は 多くの経典に三劫成仏が説かれているのに即身成仏を主張する論拠は何か? という問いかけから始まる。 その問いに対し、大師は「二経一論八箇の証文」を挙げる。 「二経」とは『金剛頂経』と『大日経』であり、一論とは『菩提心論』である。 「八箇の証文」は次のとおりである。 ・第一の証文 不空訳『金剛頂一字頂輪王瑜伽一切時処念誦成仏儀軌』 この三昧を修する者は、現に仏の菩提を証す ・第二の証文 金剛智訳『金剛頂瑜伽修習毘盧遮那三摩地法』 もし衆生有って、こ ...
タイの洪水 雨安居
※ この記事は2011.10.31に書かれました タイでは雨安居といって雨季の間、僧侶は寺にこもる。 例年だと雨安後が明けると雨季も明ける。 今年は、十月十二日に安居が明けたのだが、 まだ、雨は降り続いている。 数百の寺が水没し、現地におられる日本の方々も 被災されていることは日本でも、たびたび報道されている。 東日本大震災、またそれに伴う原発事故、 それに対し、もっとも早く政府として 多額の義援金を送ることを決めてくれた国はタイである。 また阪神大震災の時、タイのスラムの人々が 「ナムジャイ(思いやり) ...
夏の神様 坂東三十三観音巡礼
昨日は先達で阪東三十三観音霊場の 29番「海上山 千葉寺」, 31番「大悲山 笠森寺(笠森観音)」, 32番「音羽山 清水寺(清水観音)」に行って参りました。 今回、「夏の神様」をはじめて見つけました。 このコースは五回くらい同行させていただいており、 また山門の近くなので、 これまでも何度も視界に入ってるはずなのですが、 初めてそこに鎮座されている石の文字を読みました。 夏の神様 軽い衝撃でした。 「馬頭観世音菩薩」などと神仏の名が彫ってあるのは度々、見かけますが、 これほど ...
鎌倉のロンポー・トー
先日、鎌倉に行ってきました。 何度、拝しても青空を背にされる大仏さまは壮観です。 今回、大仏さまの後ろの塀の後ろに行ってみました。 そこの灯篭の中を覗いてみると・・・! なんと! 知る人ぞ知るタイの高僧・ロンポー・トーがおられました! 小銭がたくさんお供えしてあります。 お供えした方のほとんどは、この方が誰なのか御存知なかったでしょう。 しかし、誰かわからなくても聖性を感じ、 お供えされるおおらかさが感じられ、うれしくなりました。 ※ この記事は2011.10.30に書かれました   ...
神泉苑 弘法大師・空海と善女竜王
※ この記事は2010.5.5に書かれました ここ数年、5月3日の神泉苑祭の大般若会にお呼びいただいており、 今年(2010)も出仕させていただきました。 弘法大師・空海は824年、天皇陛下からの勅命で、 この神泉苑の池畔にて雨乞いの祈祷をされました。 ところが、なかなか雨が降りません。 天眼通で見てみると、弘法大師をライバル視する守敏というお坊さんが、 雨を降らせてくれる日本中の龍を壺に封印してしまっていたのでした。 そこで弘法大師は、北インドにある無熱池から善女龍王をお呼びしました。 龍 ...