『天地麗気記』解説1 神代七代 過去七仏 地神五代 賢劫十六尊 天照大神 大日如来

神道・神仏習合

題名

【書き下し文】
天地麗気記(かみつかたしもつかたうるはしきいきとうりをきす)

この巻の題名です。近世の版本などでは、本巻を巻首に置いているので、『天地麗気記』を麗気記全体の総題とすることもあります。

神代七代・過去七仏・北斗七星

【書き下し文】天神七葉は、過去の七仏転じて天の七星と呈(あら)はる。

【現代語訳】天神七代は過去七仏であり、転じて天体の北斗七星として現れた。

“天神七代(かみつかたかけりましますななは)”とは、神代七代(かみのよななよ)と称されます。

『日本書紀』では、最初に為った以下の十一柱七代の神を神世七代としています。
➀、国常立尊(くにのとこたちのみこと)
➁、国狭槌尊(くにのさつちのみこと)
➂、豊斟渟尊(とよぐもぬのみこと)
➃、泥土煮尊(ういじにのみこと)・沙土煮尊(すいじにのみこと)
➄、大戸之道尊(おおとのぢのみこと)・大苫辺尊(おおとまべのみこと)
⑥、面足尊 (おもだるのみこと) ・惶根尊 (かしこねのみこと)
⑦、伊弉諾尊 (いざなぎのみこと)・伊弉冉尊 (いざなみのみこと)

『古事記』では、別天津神(ことあまつかみ)の次に成った十二柱七代を神世七代としてます。
別天津神(ことあまつかみ)とは、天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)・高御産巣日神(たかみむすひのかみ)・神産巣日神(かみむすひのかみ)・宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ)・天之常立神(あめのとこたちのかみ)です。
最初の二代は一柱で一代、その後は二柱で一代と数えます。
➀、国之常立神(くにのとこたちのかみ)
➁、豊雲野神(とよぐもぬのかみ)
➂、宇比地邇神(うひぢにのかみ)・須比智邇神(すひぢにのかみ)
➃、角杙神(つぬぐいのかみ)・活杙神(いくぐいのかみ)
➄、意富斗能地神(おおとのぢのかみ)・ 大斗乃弁神(おおとのべのかみ)
⑥、淤母陀琉神(おもだるのかみ) ・阿夜訶志古泥神(あやかしこねのかみ)
⑦、伊邪那岐神(いざなぎのかみ)・伊邪那美神(いざなみのかみ)

これら天神七代が過去七仏であり、北斗七星でもあると説かれています。

過去七仏

過去七仏とは、釈迦仏を七番目と数えた過去の七仏です。
➀、毘婆尸仏
➁、尸棄仏
➂、毘舎浮仏
➃、倶留孫仏
➄、倶那含牟尼仏
⑥、迦葉仏
⑦、釈迦仏

地神五代

【書き下し文】地神五葉は現在の四仏に舎那を加増(くわ)へて五仏と為り、化して地の五行神と成る。

【現代語訳】地神五代は現在劫の四仏に大日如来を加えた五仏であり、変化して地上の五行神と成った。

“地神五葉”とは、地神五代であり、ここでは
➀、天照大神(アマテラス)
➁、天忍穂耳尊(アメノオシホミミ)
③、瓊瓊杵尊(ニニギ)
④、彦火々出見尊(ヒコホホデミ)
⑤、鵜芽鶿葦不合尊(ウガヤフキアエズ)
を指します。

“現在の四仏”とは、現在劫である賢劫に降誕した四仏、すなわち過去七仏の内、
➃、倶留孫仏
➄、倶那含牟尼仏
⑥、迦葉仏
⑦、釈迦仏
の四仏を指します。

“舎那”は毘盧舎那のことで、毘盧舎那(梵語・ヴァイローチャナ)=大日如来です。

“五行神”とは、木火土金水の五行を神とし、地神五代を五行神に配当する説は『大和葛城宝山記』にも説かれています。

賢劫の十六尊

【書き下し文】十六葉の大神を供奉する大小の尊神は、賢劫の十六尊也。

【現代語訳】これら十六の大神を供奉する大小の尊神は、現在劫の十六尊である。

劫とは、宇宙論的な長大なる時間の単位です。
現在の時代区分は劫でいうと、賢劫にあたります。

賢劫の期間には一千の仏が降誕します。
賢劫の十六尊は賢劫千仏の上首です。

『略出念誦経』の賢劫十六尊は、
東方の
➀、弥勒菩薩
➁、不空見菩薩
③、捨悪趣菩薩
④、催憂悩菩薩
南方
➄、香象菩薩
⑥、勇猛菩薩
⑦、虚空蔵菩薩
⑧、智幢菩薩
西方
⑨、無量光菩薩
⑩、月光菩薩
⑪、賢護菩薩
⑫、光網菩薩
北方
⑬、金剛蔵菩薩
⑭、無尽意菩薩
⑮、弁積菩薩
⑯、普賢菩薩

【書き下し文】憶(ここ)に昔、因地に在りて、菩薩道を行じタマひし時、千(ちたひ)を生(あれま)して万(ももたひ)を生す。
百葉より百世を重ね、千々に亘(わた)りて国を守る神に坐(ましま)す。
下々して中神仁王(なかつみたまおほきみ)を守る。

【現代語訳】思うに昔、仏道修行の段階にあって菩薩行を行じていた時、一千回も一万回も生まれ変わった。
だから、昔から百世に百世を重ね、これからも千の千倍に亘って国を護る神なのである。
それが下生し、中神仁王たる天皇を守護しているのである。

『天地麗気記』解説2につづく

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