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『無畏三蔵禅要』6のつづき
又行者の為めに一陀羅尼を授けて曰く。
唵薩婆尾堤娑嚩賀(おんさらはびていそわか)
持誦の法は、或は前後両箇の陀羅尼を意に随つて一箇を誦せ、並ぶべからず。
恐らくは心を興すに専らならず。
夫れ三昧に入らんと欲はんものは、初学の時に事に諸境を絶ち縁務を屛除し、独り一ら静處し、半跏にして坐し巳れば、須らく先づ、手印を作り護持すべし。
檀慧を以て並べ合はせ竪て、その戒忍方願は、右左を押して正相(あひ)叉ひ、二の背上に著け、その進力を合せ竪て、頭(はし)相ひ柱へ曲げて心中を開くこと少し許り、その禅智は並べ合せ竪て即ち成す。
この印を作し巳て先づ頂上を印し、次に額上を印し、即ち下りて右の肩を印し、次に左の肩を印し、然して後ち心を印し、次に下りて右の膝を印し、次に左の膝を印し、一一の印処に於て各々前の陀羅尼を誦すること七遍、乃ち七處に至り訖り。
然して後頂上に於て印を散し訖り、即ち数珠を執り、この陀羅尼を念誦す。
若し能く多く誦せば二百三百遍乃至三千五千することも亦た得るなり。
坐する時ごとに一洛叉を誦し満すれば最も成就し易し。
※洛叉(らくしゃ)=10万
次、座法
既に身を加持し訖り、然して端身正住にして前の如く半跏坐す。
右を以て左を押へ全跏を結することを須ひざれ、全跏は則ち痛み多し、若し心痛境を縁せば即ち定を得難し。
若し先きより来(このか)た全跏し得るものは最も妙となすなり。
然して頭を直くして平かに望むべし。
眼過開を用ゐざれ、又全合を用ゐざれ。
大に開けば則ち心散し、合すれば即ち婚沈(こんじん)す。
外境を縁することなかれ。
安坐すること即ち訖るときは、然して心を運んで供養し懺悔すべし。
先づ心を標して、十方の一切諸仏の、人天会の中に於て、四衆の為めに説法すと観察したてまつる。
然して後に自ら己身を観ぜよ。
一一の諸仏の前に於て、三業を以て虔み恭しく礼拝し讃嘆したてまつると。
行者この観を作す時、了々分別ならしむること、目前に対するが如くせよ。
極めて明らかに見せしめて、然して後に運心して、十方世界に於て、所有の一切の天上人間の、上妙の香華旛盖飲食珍宝種々の供具、虚空を盡し法界に遍して、一切諸仏諸大菩薩・法・報・化身・教・理・行・果及び大会の衆に供艱したてまつれ。
次、懺悔
行者この供養を作し巳つて、然して後に運心して一一の諸仏菩薩の前に於て、殷重至誠の心を起こして発露懴悔せよ。
我等無始より来(このかた)今日に至るまて、煩悩心を復ふて久しく生死に流れ、身口意の業を具さに陳ること難し、我れ唯今知て廣く懺す。
一懺し巳て後、永く相続を断つて更に起作せじ。
唯願はくば諸仏菩薩、大慈悲力を以て、威を加へ護念し玉ふて、我が懺を摂受して我が罪障をして速かに消滅を得せしめたまへ。
(これを内心秘密懺悔と名く、最も、微妙なり。)
『無畏三蔵禅要』8につづく