『即身成仏義』弘法大師・空海
即身成仏義 問うて曰く、諸の経論の中に、皆三劫成仏を説く。いま即身成仏の義を建立する、何の憑拠か有るや。 答う、秘密蔵の中に如来、是の如く説き給う。 問う、彼の経に云何が説く。 『金剛頂経』に説かく、 「この三昧を修する者は、現に仏の菩提を証す」(不空訳『金剛頂一字頂輪王瑜伽一切時処念誦成仏儀軌』(略称『一切時処念誦成仏儀軌』) <この三昧とは、謂く大日尊一字頂輪王の三摩地なり>と また云く、 「もし衆生有って、この教に遇って、昼夜四時に精進して修すれば、現世に歓喜地を証得し、後の十六生に ...
「五悔」 普賢行願讃
真言密教では「普賢行願讃」ではなく、金剛界は「五悔」、胎蔵界では「九方便」を読誦する。 伝統説では「普賢行願」と「五悔」と「九方便」は異名同体であり、同じ内容であるとされる。 五悔は、「至心帰命」「至心懺悔」「至心隋喜」「至心勧請」「至心廻向」の五段からなる。 「至心懺悔」だけでなく他の段も「悔」というのは、過去に行願を実践しなかった過失と、行願に背いた罪を懺悔する意味がある。 第一 至心帰命 十方一切の仏と最勝の妙法と菩提衆とを帰命したてまつる。 身口意清浄の業を以て、慇懃に合掌し恭敬して礼したてまつる ...
令和三年の当年星供 星まつり
2月2日19時より、当年星供を厳修いたしました。 感染防止のため、今年は助法なしで一人で修法しました。 願主の方々の除災招福とあわせて、コロナ禍の早期終息を祈願いたしました。 今年は例年よりもたくさんの方からお申込みいただき、また、お申込みと合わせてお布施、お供物をいただきました。心より感謝申し上げます。 ※祈願申し込みいただきました方には、御札とカードお守りとお供物をお送りさせていただきます。郵送までは例年よりも少しお時間いただきますことご了承ください。 合掌
善無畏『無畏三蔵禅要』全文
善無畏三蔵(637-735)は、真言密教における伝持の第五祖であり、『大日経』を唐に伝え、弟子の一行禅師らと共に漢訳しました。 『無畏三蔵禅要』は、善無畏三蔵が、嵩山(すうざん)会善寺の敬賢(660-723)に、戒と禅定について説かれた教えを西明寺慧警が記録し、後に、さらに修補されたといわれます。 修補したのは、一説に一行禅師ともいわれます。 弘法大師が御請来されました。 敬賢和上は北宗禅の祖・神秀(606-706)の弟子です。 南宗禅は頓悟といって段階を経ずに一気に悟るという教えなのに対し、北宗禅は段階 ...
『無畏三蔵禅要』9 三摩地法 月輪観
はじめての方は『無畏三蔵禅要』1からどうぞ 『無畏三蔵禅要』8のつづき 次、三摩地法 次に応さに三摩地を修すべし。 言ふ所の三摩地とは、更らに別の法なし。 直(ただ)是れ一切衆生の自性清浄心なり。 名けて大円鏡智となす。 上諸仏より下蠢動に至るまで、悉く皆同等にして増滅あることなし。 但し無明妄想の客塵に覆はるるが為めに、是の故に生地に流転して仏と作るを得ず。 行者応当(まさ)に安心静住して一切の諸境を縁することなかるべし。 仮りに一の円明の猶ほ浄月の如くなるを想へ、身を去ること四尺なり。 ...
『無畏三蔵禅要』8 弘誓願 調気法 呼吸法
はじめての方は『無畏三蔵禅要』1からどうぞ 『無畏三蔵禅要』7のつづき 次に応さに弘誓願(ぐせいがん)を発すべし。 我久しく有流に在り、或は過去に於て、会て菩薩の行を行し、無辺の有情を利楽し、或は禅定を修し、勤行精進して三業を護持せる所有(あらゆる)恒沙の功徳乃至仏果。 唯願はくば諸仏菩薩、慈願力を與して威を加へ護念して、我をして斯の功徳に乗じて速かに一切の三昧門と相応し、速かに一切の陀羅尼門と相応し、速かに一切自性清浄を得しめたまへ。 是の如く広く誓願を発して、退失せざらしめば、速かに成就を得ん。 次、 ...
『無畏三蔵禅要』7 陀羅尼 座法 礼拝
はじめての方は『無畏三蔵禅要』1からどうぞ 『無畏三蔵禅要』6のつづき 又行者の為めに一陀羅尼を授けて曰く。 唵薩婆尾堤娑嚩賀(おんさらはびていそわか) 持誦の法は、或は前後両箇の陀羅尼を意に随つて一箇を誦せ、並ぶべからず。 恐らくは心を興すに専らならず。 夫れ三昧に入らんと欲はんものは、初学の時に事に諸境を絶ち縁務を屛除し、独り一ら静處し、半跏にして坐し巳れば、須らく先づ、手印を作り護持すべし。 檀慧を以て並べ合はせ竪て、その戒忍方願は、右左を押して正相(あひ)叉ひ、二の背上に著け、その進力を合せ竪て、 ...
『無畏三蔵禅要』6 観智密要禅定法門 大乗妙旨 三昧耶戒真言 発菩提心真言
はじめての方は『無畏三蔵禅要』1からどうぞ 『無畏三蔵禅要』5のつづき 次に観智密要禅定法門大乗妙旨を授くべし。 夫れ法を授けんと欲はんものは、此の法は深奥にして信するもの甚だ希れなり、衆に対すべからず、機を量って密かに授けよ。 仍て須らく先づ為めに種々の方便を説て、聖教を会通して堅信を生せしめて疑網を決除すべし、然して開暁すべし。 輸波伽羅三蔵の曰く、衆生の根機不同なり、大聖の説教亦復た一にあらず。 輸波伽羅(しゅばから)=Śubhakarasiṃha(シュバカラシンハ)=善無畏 一法を偏執して互ひに相 ...
『無畏三蔵禅要』5 十重戒門 無畏三蔵禅要の菩薩戒
はじめての方は『無畏三蔵禅要』1からどうぞ 『無畏三蔵禅要』4のつづき 第十一十重戒門 諸仏子、菩薩戒を受持すべし。 謂ゆる十重戒とは今当さに宣説すべし、至心に諦らかに聴け。 一には菩提心を退くべからず、成仏を妨ぐるが故に。 二には三宝を捨て外道に帰依すべからず、是れ邪法なるが故に。 三には三宝及び三乗の経典を毀謗すべからず、仏性に背くが故に。 四には甚深の大乗経典の通解せざる處に於て疑惑を生ずべからず、凡夫の境にあらざるが故に。 五には若し衆生ありて巳に菩提心を発さんには、是の如くの法を説て菩提心を退し ...
『無畏三蔵禅要』4 羯磨門 結戒門 修四摂門
はじめての方は『無畏三蔵禅要』1からどうぞ 『無畏三蔵禅要』3のつづき 第八羯磨門。 諸仏子諦(あきら)かに聴け、今汝等が爲めに羯磨して戒を授けん、正しく是れ得戒の時なり。 至心に諦かに羯磨の文を聴け。 十方三世の一切の諸仏諸大菩薩、慈悲憶念したまへ。 此の諸仏子、今日より始めて、乃ち当さに菩提道場に坐するに至るまで、過去現在未来の一切の諸仏菩薩の浄 戒を受学すべし。 謂ゆる摂津儀戒、摂善法戒、饒益有情戒なり。 此の三の浄戒具足して受持すべし。 (是の如くすること三たびに至る) 至心に頂禮したてまつる。 ...
『無畏三蔵禅要』3 発菩提心門 問遮難門 請師門
はじめての方は『無畏三蔵禅要』1からどうぞ 『無畏三蔵禅要』2のつづき 第五発菩提心門。 弟子某甲、始めて今身より乃ち當さに菩提道場に坐するに至るまで、誓願して無上大菩提心を発す。 衆生無辺なり度せんと誓願す。 福智無辺なり集めんと誓願す。 法門無辺なり学せんと誓願す。 如来無辺なり仕ひんと誓願す。 無上仏道を成せんと誓願す。 今発すところの心は、また当に我法の二相を遠離して本覚の真如の平等を顕明すべし。 正智現前して、善巧智を得て、普賢の心を具足し円満せん。 唯願はくば十方の一切の諸仏諸大菩薩、我等を証 ...
『無畏三蔵禅要』2 供養門 懺悔門 帰依門
はじめての方は『無畏三蔵禅要』1からどうぞ 第二供羪門 〈次に、教て運心して遍く十方の諸仏、及び無辺世界微塵刹海の恒沙の諸仏菩薩を想ひ、自身一一の仏前に於て、頂礼讃歎して、之を供養すと想はしむべし。〉 弟子某甲等、十方世界の所有の一切の最勝上妙の香華旙盖種々の勝事をもて、諸仏及び諸菩薩の大菩提心に供養したてまつる。 我今発心より未来際を盡すまで、誠を至して供養し、至心に頂礼したてまつる。 第三懴悔門。 弟子某甲、過去無始より巳来、乃至今日にいたるまで、貪瞋痴等の一切の煩悩及び忿恨(ふんこん) ...
『無畏三蔵禅要』1 善無畏三蔵 一行禅師 敬賢和上 慧警禅師
善無畏三蔵(637-735)は、真言密教における伝持の第五祖であり、『大日経』を唐に伝え、弟子の一行禅師らと共に漢訳しました。 『無畏三蔵禅要』は、善無畏三蔵が、嵩山(すうざん)会善寺の敬賢(660-723)に、戒と禅定について説かれた教えを西明寺慧警が記録し、後に、さらに修補されたといわれます。 修補したのは、一説に一行禅師ともいわれます。 弘法大師が御請来されました。 敬賢和上は北宗禅の祖・神秀(606-706)の弟子です。 南宗禅は頓悟といって段階を経ずに一気に悟るという教えなのに対し、北宗禅は段階 ...
『天地麗気記』書き下し文+現代語訳+解説 まとめ
題名 【書き下し文】 天地麗気記(かみつかたしもつかたうるはしきいきとうりをきす) この巻の題名です。近世の版本などでは、本巻を巻首に置いているので、『天地麗気記』を麗気記全体の総題とすることもあります。 神代七代・過去七仏・北斗七星 【書き下し文】天神七葉は、過去の七仏転じて天の七星と呈(あら)はる。 【現代語訳】天神七代は過去七仏であり、転じて天体の北斗七星として現れた。 “天神七代(かみつかたかけりましますななは)”とは、神代七代(かみのよななよ)と称されます。 『日本書紀』では、最初に為った以下の ...
『大和葛城宝山記』書き下し文+解説 まとめ
大和葛城宝山記(やまとかつらぎほうざんき)は、両部神道を代表する書の一つであり、大和葛宝山記、大和葛木宝山記、葛城宝山記、神祇宝山記とも呼ばれます。 奥書に“天平十七年辛酉四月一日”、とありますが、一般には鎌倉時代後期に成立したと考えられています。 大和葛城宝山記 行基菩薩撰 “大和(やまと)”は狭義には奈良、広義には日本を指します。 「葛城宝山」とは、奈良と大阪の県境に位置する葛城山(かつらぎさん)です。 撰者の行基菩薩(668-749)は、聖武天皇(701-756)・良弁僧正(689-774)・菩 ...
『中臣祓訓解』まとめ 真言密蔵の本源、天神地祇の父母なり
『中臣祓訓解(なかとみのはらえくんげ)』は日本国が神国であると同時に仏国土であるという中世神道の立場から、「中臣祓(なかとみのはらえ)」を解説しています。 中臣祓訓解 夫れ和光垂迹の起り、国史家牒に載すと雖(いえど)も、猶(な)を遺(のこ)る所有りて、本の意(こころ)を識(し)ること靡し。 聊(いささ)か覚王の密教に託(つ)げて、略して心地の要路を示すらく而已。 蓋(けだ)し開く、中臣祓(なかとみのはらへ)は、天津祝(あまのほさ)、太祝詞(たののんとことば)、伊弉那諾尊(いざなぎのみこと)の宣命なり。 天 ...
幾何学曼荼羅(図絵曼荼羅)の成立要因についての一考察 瞑想 マンダラ ゾクチェン トゥカル
序論 曼荼羅がどのように成立したのかという問いに対し、田中公明氏はその労作『曼荼羅イコノロジー』(註1)、並びに『両界曼荼羅の誕生』(註2)において実に豊富な資料を挙げ、極めて明快な解説をされている。 (註1)曼荼羅イコノロジー その要旨は以下のとおりである。 紀元二世紀頃の仏像にも見られる釈迦・観音・金剛手からなる三尊形式(図1)は、幾何学パターンをもたない叙景曼荼羅(註3)へと発展した。東寺蔵「請雨経曼荼羅」(図2)は叙景曼荼羅の一例である。この曼荼羅の中央の楼閣は後に出現する「幾何学的構造を持つ曼荼 ...
『阿字観』栂尾上人記 読み下し文 明恵上人の阿字観
栂尾上人=明恵上人 阿字観 栂尾上人記 夫れ菩提心と者即ち阿字観也。阿字観と者本不生の理也。本不生の理と者即ち諸佛の心地也。諸仏の心地と者一切衆生之色心の實相也。色心の實相と者我が一念の心也。一念の心と者不随は悪に善に着せざるの心也。方寸の胸中に八分の肉團有り。悟の前には八葉の心蓮臺と顕る也。此の心蓮臺の上に阿字有り。變じて月輪と成る。月輪と者我か心に起る菩提心の質(すがた)也。我か心に此理を具するのみにあらず一切衆生も同く具へせり。乃至非情草木も皆悉く備へたり。青き草の葉の上に置く白き露の色も阿字の質也 ...
真言密教の血脈と三身説 法身普賢 金剛薩埵
この記事は、 真言密教の血脈のうち、 大日如来から龍猛菩薩までの 相承を三身説で説明することと、 チベット仏教ニンマ派の ゾクチェンの血脈にも 少しだけ触れてます。 真言密教は 真言教主・大日如来から始まり、 第二祖・金剛薩埵、 第三祖・龍猛菩薩へと伝えられました。 如来の三種類の存在形態を 「三身」といいます。 三身とは「法身」「報身」「応身」です。 法身とは、 色も形も無い一切の本性です。 報身は、 日本では解釈が数種あり、 統一されていませんが、 チベットにおいては 「報身は色身の根源 ...
大黒天と血を好む神と金剛薩埵による浄化
大黒天も、仏教とともにインドからやって来られました。 大黒天はインドの言葉で「マハーカーラ(大いなる暗黒)」 「摩訶迦羅天(まかきゃらてん)」と音写します。 日本の大黒天は満面の笑顔で福々しいですが、 胎蔵界曼荼羅の大黒天のように 本来は非常に禍々しいといっても差し支えないほど恐ろしい神なのです。 胎蔵界曼荼羅の大黒天 私が修行していたネパールのチベット仏教僧院は、 登山口にあったのですが、月に1回はビザの更新などの雑用で、 カトマンズの町に行かなければなりませんでした。 埃っぽいカトマンズ ...