『坐禅三昧経』9 「第一 貪欲を治するの法門」2 浄観も亦た三品有り。若し禅定を得ば、即ち三相あり
はじめての方は『坐禅三昧経』1からどうぞ 『坐禅三昧経』8のつづき 復た次に浄観も亦た三品有り。 或いは初めて行を習し、或いは已に行を習し、或いは久しく行を習すなり。 若し初めて行を習せば、当に教うべし。 言わく、「皮を破するの想を作し、不浄を除却して、当に赤き骨人を観ずべし。 意を繁して観行し、外念あらしめず。 外念の諸縁は、念を摂して還らしむ」と。 若し已に行を習せば、当に教うべし。 言わく、「皮肉を却(しりぞ)けて尽くるを想し、頭骨を観じて、外念あらしめず。 外念の諸縁は、念を摂して還らしむ」と。 ...
善無畏『無畏三蔵禅要』全文
善無畏三蔵(637-735)は、真言密教における伝持の第五祖であり、『大日経』を唐に伝え、弟子の一行禅師らと共に漢訳しました。 『無畏三蔵禅要』は、善無畏三蔵が、嵩山(すうざん)会善寺の敬賢(660-723)に、戒と禅定について説かれた教えを西明寺慧警が記録し、後に、さらに修補されたといわれます。 修補したのは、一説に一行禅師ともいわれます。 弘法大師が御請来されました。 敬賢和上は北宗禅の祖・神秀(606-706)の弟子です。 南宗禅は頓悟といって段階を経ずに一気に悟るという教えなのに対し、北宗禅は段階 ...
『坐禅三昧経』8 「第一 貪欲を治するの法門」1 不浄観
はじめての方は『坐禅三昧経』1からどうぞ 『坐禅三昧経』7のつづき 第一 貪欲を治するの法門 「婬欲の多き人、不浄観を習(しゅう)せよ。 足より髪に至るまで、不浄充満す。 髪・毛・爪・歯・薄皮・厚皮・血・肉・筋・脈・骨・髄・肝・肺・心・脾(ひ)・腎・胃・大腸・小腸・屎・尿・洟(はなみず)・唾・汗・涙・垢・坋(ちり)・膿・脳・胞・胆・痰水・微膚・脂肪・脳膜、身中の是くの如きは種種の不浄なり。 復た次に不浄漸(すす)まば、青瘀(しょうお)し、膖脹(ほうちょう)し、破爛し、血、流れて塗漫(ずまん)し、臭膿、噉食 ...
『坐禅三昧経』7 是くの如く種種なるは、是れ愚痴の相なり。
はじめての方は『坐禅三昧経』1からどうぞ 『坐禅三昧経』6のつづき 愚痴の人の相は、疑うこと多く、悔やむこと多く、懶堕にして見無し。 自ら満ちて屈し難く、憍慢(きょうまん)にして受け難し。 信ずべきは信ぜず、信に非ざるは而(すなわ)ち信ず。 恭敬(くぎょう)なるを知らずして処処に信向し、師多く、軽躁(きょうそう)にして搪突(とうとつ)を羞ずる無し。 事を作さば慮り無く、教えに反(そむ)きて渾戻(こんれい)す。 友に親しむを択(えら)ばず、自ら修飾せず。 異道を師とするを好み、善悪を別(わ)かたず。 受け難 ...
『坐禅三昧経』6 是くの如く種種なるは、是れ瞋恚の相なり。
はじめての方は『坐禅三昧経』1からどうぞ 『坐禅三昧経』5のつづき 瞋恚の人の相は、憂悩多く、卒暴に忿(いか)りを懐き、身口麁廣(しんくそこう)にして、能く衆苦を忍び、事に触れて可ならず。 愁(うれ)い多くして歓ぶこと少なく、能く大悪を作して、憐愍の心無く、喜びて闘訟(とうしょう)を為す。 顔貌毀悴(きすい)して、皴眉眄來(しゅうびべんらい)なり。 語り難く悦び難く、事(つか)え難く可とし難し。 其の心、瘡(そう)の如くして、人の義に闕(か)くるを宣(の)べ、論ずること強梁(ごうりょう)にして折伏(しゃく ...
『坐禅三昧経』5 是くの如く種種なるは、是れ婬欲の相なり
はじめての方は『坐禅三昧経』1からどうぞ 『坐禅三昧経』4のつづき 或いは復た之れを問わん。 「三毒の中、何れの者、偏重せるや。 婬欲、多きや。 瞋恚、多きや。 愚痴、多きや。 云何(いかん)が相を観ずるや。 若し婬すること多き相ならば、為人(ひととなり)、軽便(きょうびん)にして、妻妾(さいしょう)を蓄(たくわ)うること多く、語ること多く、信ずること多く、顔色和悦にして、言語便易なり。 瞋恨(しんこん)少なく、亦た憂愁少なし。 技術を能くすること多く、聞くを好みて多識なり。 文頌(もんじゅ)に愛著(あ ...
『坐禅三昧経』4 散文 戒律「汝よ、何れの戒を破せるや」
はじめての方は『坐禅三昧経』1からどうぞ 『坐禅三昧経』3のつづき 食、味処を知るを過(す)ぐれば 美悪、都(すべ)て異なる無し 愛好より憂苦(うく)を生ず 是(ここ)を以て愛を造る莫かれ 業を世界中に行じて 美悪、更(か)わらざるは無し 一切、已(すで)に具(つぶ)さに受く 当に是れを以て自ら抑えるべし 若し蓄獣中に在らば 呞(かみかえ)せる草もて味を具せりと為さん 地獄に鉄丸(てつがん)を呑まば 燃熱、劇(はげ)しくして鉄を迸(ほとばし)らさん 若し薜茘(へいれい)中に在らば 膿(うみ)・吐・火(や) ...
『坐禅三昧経』3 一心にして常に道を行ざば 久しからずして涅槃を得ん
はじめての方は『坐禅三昧経』1からどうぞ 『坐禅三昧経』2のつづき 誰れか能(よ)く死する時を知らんや 趣くところは何れの道よりせんや 譬(たと)うるに、風中の燈(ともしび)の如く 滅する時節を知らず 道法に至ること、難(かた)からず 大聖、指事して説く 智及び智処を説き 此の二、外に仮らず 汝、若し法逸せず 一心にして常に道を行ざば 久しからずして涅槃を得ん 第一の常楽の処なり 利智にして善人に親しみ 心を尽くして仏法を敬い 穢(けが)れたる不浄の身を厭(いと)い 苦より離れて解脱を得(う) 閑静にして ...
『坐禅三昧経』2 四念止(四念処)を捨つれば、心に悪の造らざるは無し
はじめての方は『坐禅三昧経』1からどうぞ 痴倒黒暝(ちとうこくみょう)を破し 炬(こ)を執りて以て明らかに観ぜよ 若(も)し四念止(しねんし)を捨つれば 心に悪の造らざるは無し 四念止=四念住、四念処 四念処は、身念処・受念処・心念処・法念処からなる。 身念処=身は不浄なり 受念処=受は苦なり 心念処=心は無常なり 法念処=法は無我なり 象の逸すれば鉤(かぎ)かくること無きが如く 終(つ)いに道に順調せず 今日、此の業を営まば 明日、彼の事を造らしむ 著するをたのしみて苦を観ぜよ 死の賊の至るを覚らず 怱 ...
『坐禅三昧経』1 鳩摩羅什訳 鳩摩羅什について
『坐禅三昧経(ざぜんさんまいきょう)』巻上 姚秦三蔵鳩摩羅什訳 鳩摩羅什(344年 - 413年 or 350年 - 409年) 鳩摩羅什(くまらじゅう)は梵語クマーラジーヴァの音訳。 鳩摩羅什は約300巻を翻訳した最初の三蔵法師。 玄奘、真諦、不空金剛とともに四大訳経家と呼ばれる。 漢訳『法華経』は三種伝えられているが、 『正法華経』10巻26品(竺法護訳 286年) 『妙法蓮華経』8巻28品(鳩摩羅什訳 400年) 『添品妙法蓮華経』7巻27品(闍那崛多・達磨笈多共訳 601年) このうち鳩摩羅什訳が ...
『無畏三蔵禅要』11 四の陀羅尼 経行の法則 雑学を以て心を惑はして、一生をして空しく過さしむることなかれ
はじめての方は『無畏三蔵禅要』1からどうぞ 『無畏三蔵禅要』10のつづき 汝等行人初め修定を學せば、応さに過去の諸佛秘密方便加持修定の法を行すべし。 一体にして一切の総持門と相応す、是の故に応さに須らく此の四の陀羅尼を受くべし。 陀羅尼に曰く。 唵速乞叉摩嚩曰囉(おんそきしまばざら) この陀羅尼は能く所観をして成就せしむ。 唵底瑟吒嚩曰囉(おんちしゅつたばざら) この陀羅尼は能く所観をして失なからしむ。 唵婆頗囉嚩曰囉(おんそはらばざら) この陀羅尼は能く所観をして漸く廣ならしむ。 唵僧賀囉嚩曰囉(おんそ ...
『無畏三蔵禅要』10「五種の心義」行者の仏心を成するに五種の楷段あるなり
はじめての方は『無畏三蔵禅要』1からどうぞ 『無畏三蔵禅要』9のつづき 一切の妄想貧瞋痴等の一切の煩悩、断除を仮らずして自然に起らず、性常に清浄なり。 此れに依りて修習して乃し成佛に至れ、唯是れ一道にして更らに別の理なし。 此は是れ諸佛菩薩内證の道なり。 諸の二乗外道の境界にあらず。 是の観を作し已ぬれば、一切の佛法恒沙の功徳地に由らずして悟る。 一を以て之を貫して自然に通達す。 能く一字を開て無量の法を演説し、刹那に諸法の中に悟入して自在無礙なり。 去来起滅なく一切平等なり。 此を行して漸く至らば、昇進 ...
『無畏三蔵禅要』9 三摩地法 月輪観
はじめての方は『無畏三蔵禅要』1からどうぞ 『無畏三蔵禅要』8のつづき 次、三摩地法 次に応さに三摩地を修すべし。 言ふ所の三摩地とは、更らに別の法なし。 直(ただ)是れ一切衆生の自性清浄心なり。 名けて大円鏡智となす。 上諸仏より下蠢動に至るまで、悉く皆同等にして増滅あることなし。 但し無明妄想の客塵に覆はるるが為めに、是の故に生地に流転して仏と作るを得ず。 行者応当(まさ)に安心静住して一切の諸境を縁することなかるべし。 仮りに一の円明の猶ほ浄月の如くなるを想へ、身を去ること四尺なり。 ...
『無畏三蔵禅要』8 弘誓願 調気法 呼吸法
はじめての方は『無畏三蔵禅要』1からどうぞ 『無畏三蔵禅要』7のつづき 次に応さに弘誓願(ぐせいがん)を発すべし。 我久しく有流に在り、或は過去に於て、会て菩薩の行を行し、無辺の有情を利楽し、或は禅定を修し、勤行精進して三業を護持せる所有(あらゆる)恒沙の功徳乃至仏果。 唯願はくば諸仏菩薩、慈願力を與して威を加へ護念して、我をして斯の功徳に乗じて速かに一切の三昧門と相応し、速かに一切の陀羅尼門と相応し、速かに一切自性清浄を得しめたまへ。 是の如く広く誓願を発して、退失せざらしめば、速かに成就を得ん。 次、 ...
『無畏三蔵禅要』7 陀羅尼 座法 礼拝
はじめての方は『無畏三蔵禅要』1からどうぞ 『無畏三蔵禅要』6のつづき 又行者の為めに一陀羅尼を授けて曰く。 唵薩婆尾堤娑嚩賀(おんさらはびていそわか) 持誦の法は、或は前後両箇の陀羅尼を意に随つて一箇を誦せ、並ぶべからず。 恐らくは心を興すに専らならず。 夫れ三昧に入らんと欲はんものは、初学の時に事に諸境を絶ち縁務を屛除し、独り一ら静處し、半跏にして坐し巳れば、須らく先づ、手印を作り護持すべし。 檀慧を以て並べ合はせ竪て、その戒忍方願は、右左を押して正相(あひ)叉ひ、二の背上に著け、その進力を合せ竪て、 ...
『無畏三蔵禅要』6 観智密要禅定法門 大乗妙旨 三昧耶戒真言 発菩提心真言
はじめての方は『無畏三蔵禅要』1からどうぞ 『無畏三蔵禅要』5のつづき 次に観智密要禅定法門大乗妙旨を授くべし。 夫れ法を授けんと欲はんものは、此の法は深奥にして信するもの甚だ希れなり、衆に対すべからず、機を量って密かに授けよ。 仍て須らく先づ為めに種々の方便を説て、聖教を会通して堅信を生せしめて疑網を決除すべし、然して開暁すべし。 輸波伽羅三蔵の曰く、衆生の根機不同なり、大聖の説教亦復た一にあらず。 輸波伽羅(しゅばから)=Śubhakarasiṃha(シュバカラシンハ)=善無畏 一法を偏執して互ひに相 ...
『無畏三蔵禅要』5 十重戒門 無畏三蔵禅要の菩薩戒
はじめての方は『無畏三蔵禅要』1からどうぞ 『無畏三蔵禅要』4のつづき 第十一十重戒門 諸仏子、菩薩戒を受持すべし。 謂ゆる十重戒とは今当さに宣説すべし、至心に諦らかに聴け。 一には菩提心を退くべからず、成仏を妨ぐるが故に。 二には三宝を捨て外道に帰依すべからず、是れ邪法なるが故に。 三には三宝及び三乗の経典を毀謗すべからず、仏性に背くが故に。 四には甚深の大乗経典の通解せざる處に於て疑惑を生ずべからず、凡夫の境にあらざるが故に。 五には若し衆生ありて巳に菩提心を発さんには、是の如くの法を説て菩提心を退し ...
『無畏三蔵禅要』4 羯磨門 結戒門 修四摂門
はじめての方は『無畏三蔵禅要』1からどうぞ 『無畏三蔵禅要』3のつづき 第八羯磨門。 諸仏子諦(あきら)かに聴け、今汝等が爲めに羯磨して戒を授けん、正しく是れ得戒の時なり。 至心に諦かに羯磨の文を聴け。 十方三世の一切の諸仏諸大菩薩、慈悲憶念したまへ。 此の諸仏子、今日より始めて、乃ち当さに菩提道場に坐するに至るまで、過去現在未来の一切の諸仏菩薩の浄 戒を受学すべし。 謂ゆる摂津儀戒、摂善法戒、饒益有情戒なり。 此の三の浄戒具足して受持すべし。 (是の如くすること三たびに至る) 至心に頂禮したてまつる。 ...
『無畏三蔵禅要』3 発菩提心門 問遮難門 請師門
はじめての方は『無畏三蔵禅要』1からどうぞ 『無畏三蔵禅要』2のつづき 第五発菩提心門。 弟子某甲、始めて今身より乃ち當さに菩提道場に坐するに至るまで、誓願して無上大菩提心を発す。 衆生無辺なり度せんと誓願す。 福智無辺なり集めんと誓願す。 法門無辺なり学せんと誓願す。 如来無辺なり仕ひんと誓願す。 無上仏道を成せんと誓願す。 今発すところの心は、また当に我法の二相を遠離して本覚の真如の平等を顕明すべし。 正智現前して、善巧智を得て、普賢の心を具足し円満せん。 唯願はくば十方の一切の諸仏諸大菩薩、我等を証 ...
『無畏三蔵禅要』2 供養門 懺悔門 帰依門
はじめての方は『無畏三蔵禅要』1からどうぞ 第二供羪門 〈次に、教て運心して遍く十方の諸仏、及び無辺世界微塵刹海の恒沙の諸仏菩薩を想ひ、自身一一の仏前に於て、頂礼讃歎して、之を供養すと想はしむべし。〉 弟子某甲等、十方世界の所有の一切の最勝上妙の香華旙盖種々の勝事をもて、諸仏及び諸菩薩の大菩提心に供養したてまつる。 我今発心より未来際を盡すまで、誠を至して供養し、至心に頂礼したてまつる。 第三懴悔門。 弟子某甲、過去無始より巳来、乃至今日にいたるまで、貪瞋痴等の一切の煩悩及び忿恨(ふんこん) ...